Collapse Into Now/R.E.M.

コラプス・イントゥ・ナウ

コラプス・イントゥ・ナウ

ツイッターのMyタイムラインでまったく話題にならないのでちょっと心配していたR.E.M.の新譜。うーん、確かにこれは話題にならないタイプのアルバムだ。全然悪くはないんだけど、特筆すべきポイントがない。復活作といわれたフレッシュな前作の後にこれだと地味な印象にならざるを得ないよなー、という。いや、出来自体はよいと思うけどもだよ。

そもそも私にとってR.E.M.って特別好きなバンドじゃないし、そんなに彼らのこと知ってるわけでもない(聴いたことないアルバムも普通にある)。でもじゃあなんでこの新譜を買ったかっていうと、ボーカルのマイケル・スタイプの声に誘惑されてしまったからなんだよね。以前こんなエントリ(http://d.hatena.ne.jp/momochixxx/20110406)も書いたけど、私この人の声すごく好き。不思議なクセと色気がある。だから、たまたまテレビやラジオで彼らの新譜の先行曲なんか流れてたりすると、どうしてもあの声に耳を奪われてしまうわけだ。しかもまたその先行曲がかっこよかったりすると、新譜買っちゃおうかなーって気にさせられてしまう。

これがこのアルバムの先行曲Mine Smell Like Honeyなのだが、いやはやかっこいい。前作の余韻も感じさせる、若々しくて疾走感溢れたロックンロールナンバー。こういうのやられてしまうと勢いでアルバム買っちゃうんだよ。これ聴いて、「あ、今回も前作と同じかんじでいくのかなー」と思ったのだが、それは違った。

いうなればこれは、「R.E.M.らしいロックナンバーが平均的に詰まったアルバム」だと思う。特別何か新しいことに挑戦してるわけでもないし、一つのことを突き詰めていくかんじでもない。「R.E.M.といえばこういう音だよね」という音がバランスよく入っている。ライナーノーツによると、「いい曲ならテンポが速かろうと遅かろうとどうでもいい」という自由なスタイル(逆に前作は速くて短い曲に限定していた)で作っていたらしく、結果制約がないぶん「らしさ」が素直に表れた内容になったのだろう。しかし「R.E.M.らしさが詰まった」と言っても、「集大成」的なものではなくて、だいぶラフな感覚でやっているのが伝わる。肩の力が抜けてるって程ではないが、気合いがこもってるってかんじでもない。頂点にはとっくに達しているバンドだし、キャリアも落ち着いてきた。そんなベテランバンドらしい実に「普通」な姿勢で作られたアルバムなのだ。それゆえ、どうしても地味な印象にはなってしまうんだけど。でも、ふと手にとって聴いてみて後悔する内容じゃないと思う。私も一周目は「『The まあまあ』なアルバム」だなと低温な反応だったのだが、二週目にはじわじわと良さを感じ始めていた。というかこれアルバムとしては普通に良作ですよ!

参加メンバーはなかなか豪華。パティ・スミスエディ・ヴェダー、ピーチズことメリル・ニスカーなど。バンドのみで作った曲より、彼らが参加した曲のほうがよい。特にメリル・ニスカーがボーカルで参加したAlligator_Aviator_Autopilo_Antimatterは先行曲以上にかっちょよくて気持ちのいい曲。パティ・スミスは最終曲Blueでボーカルをとっているんだけれど、おいしいところを全部もっていっちゃってて、なんというか流石すぎる。

特に再評価の波が来ているバンドでもないし、原点回帰は前作でやってしまったし、現在の音楽シーンへの目配せがあるような内容でもないので、話題にはならないだろうけど、ベテランバンドとしての力量やR.E.M.らしさがしっかり感じられるいいアルバム。ファンにとっては愛聴盤になるのではないかなーと思う。私もたまにCD棚から引っ張り出して聴いていきたい。