Yuck/Yuck

Yuck

Yuck

ストロークス新譜には思わぬ肩透かしを食らってしまったけれど、それと一緒に届いたYuckのファーストはなかなかの好盤だった。買う前からなんとなく「これは絶対気に入るな」と思ってたが、こういうときの私の勘はほんとによくあたる。というか、CD買うときってだいたい勘。勘で買ってハズしたことない。私はこの勘を「根拠のない自信」と呼んでいて……っていうのはどうでもいい話。本題に入りましょう。

先に訂正を一つさせてもらいますが、以前この記事(http://d.hatena.ne.jp/momochixxx/20110324/1300994927)で彼らのことを紹介したとき「Cajun Dance Partyのボーカルだったダニエルくんの新バンド」と書いたんだけど、実は元ケイジャンのベース、マックスくんもメンバーでした。ごめん、マックスくん。だって、ほら……ねえ(ぶっちゃけ地味やん)。

CDプレーヤーの再生ボタンを押した次の瞬間、1曲目Get Awayの最初の一音。何これ。何この青さ。なんて力強くて同時に儚いの。ギターのザラッとしたかんじがたまらない。

このオープニングナンバーを聴けばわかる通り、アルバムは最近のインディーギターロック(便宜上こう書いてるけど、なんだこのジャンルは)シーンで主流の音のいいとこどりをした内容になっていて、全体にノイジーな手触り。まあ今はシューゲイザーの影響を受けてないインディーバンドのほうが少ないくらいだよね(Vampire Weekendはどうかな、受けてないってことはないかもしれんが、音には表れてない)。そんな昨今のインディーシーンの中でも、ダニエルくんは特に「今流行りのインディーポップ/ロック」への無邪気な愛をまったく隠そうとしない。フォーキィな曲の挟み方とかね、非常に屈託がないと思うんだ。どの音がどうとは言えないんだけど、私と2才しか違わないこともあって、同じ地平で音楽を捉えてるかんじがすごくする。だってケイジャンでアルバム出した頃とか、「最近ヴェルヴェッツにハマっててね」とか「テレヴィジョンの『マーキー・ムーン』って最高のアルバムだよね!」とか嬉しそうに語ってたもん。私と全然変わらない。そういう無邪気な音楽愛みたいのがすごく伝わってくる。しかも、それがただ趣味的な音楽で終わっていないところが偉いというか才能あるなあと思う。良質なソングライティングがちゃんと基盤にあって、しっかりポップミュージックのフィールドで自分達の音にしている。最近流行りのインディーポップ/ロックからの引用をたくさんしつつも、枝葉は落としてかなり飲み込みやすくわかりやすい形にしてくれているのも、私にはありがたい。「インディー入門編」ってかんじで、シューゲイザー苦手な私でもすんなり聴けるんだよね。こんな言い方をすると、「お手軽」なバンドってかんじがするけど、若者ウケするポップとコアなインディーの橋渡しができるこういう間口の広い音って必要だと思う。ダニエルくんはこのへんのバランス感覚がすごくよくて、間口の広さ、入り口の高さの設定が絶妙なんだよね。思春期の、音楽聴き始めたばっかりの頃に出会うにふさわしい音というか。アルバムの構成も6曲目Georgia(こないだ貼ったやつ)を中心として終盤は少し内省的に落としていくあたり、うまい。たいへん聴きやすい。このバランス感覚のよさが、こないだ書いた「暴走する若さではなく、聡明な若さ」に繋がってるのかなーと思う。変な方向に暴発せずに、いい具合に軽妙さを残してるところがいいんだ。

しっかり売り出せば日本でもけっこう売れる音だし、そんで(私よりも)若い子達が海外インディーを聴くきっかけになってくれたらいいなーって思うので、まずは日本盤を出してほしい。そして来日してほしい。さらに今日貼った曲、こないだ貼った曲に少しでも何かグッとくるものがあった人はぜひアルバム聴いてください。ほんとにオススメ。最近のイチオシ。ハードル上げまくる。しかし保証はしないよ。でも聴いてね。