JEWELS/Queen

カップヌードルのCMでクイーンのI Was Born To Love Youのパロディソングが流れてますね。あのCMを見て思うのは、やっぱりフレディ・マーキュリーは稀代のシンガーだったんだなあということ。CMで歌ってる方もよくフレディに似せてると思うし、完璧に真似するのは無理なことなので、歌が似てないからあのCMはどうこうとか言うつもりは毛頭ないけど、でもやっぱりフレディの歌って真似できない代物なんですね。改めて彼は破格の歌声の持ち主だったんだと思ったわけです。

実はクイーンは私の洋楽の、いや音楽の入り口で、一時期はクイーンさえあればいいくらいの勢いで聴いていました。今は他にも好きなアーティスト/バンドが増えたので、相対的に聴く頻度は少なくなりましたが。初めて聴いたアルバムは「JEWELS」という日本企画編集のベスト盤です。

ジュエルズ(スペシャル・エディション)

ジュエルズ(スペシャル・エディション)

これはあのキムタク主演の月9ドラマ「プライド」の絡みで出た企画盤なんだけど、私は決してあのドラマの影響でこのアルバムを購入したのではありません(いや別に強調したいわけじゃないけど一応ね)。実は母親がクイーン世代ど真ん中だったんです。70年代半ば、彼らが日本でアイドル的人気を誇っていた頃に母はティーンだったのですね。そのため私は母(+ハッチポッチステーション)の影響で幼い頃からクイーンの歌をよく口ずさんでいたんですが、如何せん我が家には彼らのCDがなくてですね、ちゃんとCD買って聴きたいなあと思ってたときにこのベスト盤が出たから買ったというだけなんです。

私の話はこれくらいにして「JEWELS」の内容について書きましょう。1曲目がいきなり「プライド」の主題歌、I Was Born To Love Youです。「プライド」効果でかなり有名になったので、今日本でクイーンの代表曲といったらこれでしょう。確かにフレディの歌は絶品(ボーカルが録られたのはフレディの歌に最も脂がのっていた80年代半ば)だし、ブライアン・メイのギターも冴え渡った、非常に華やかな曲だけれど、この曲はクイーンの本領ではない。みなさんご存知かと思いますが、この曲にはオリジナルがあって、それはフレディのソロアルバムに収録されてます。このクイーンバージョンは、フレディの死後に、残されたメンバーが後から演奏を付け加えたものです。だからこの曲はクイーンらしさの詰まったサウンドであるけれど、それは意識された「クイーンらしさ」で彼らの本領とは言えない。

では彼らの本領はどれかというと、2曲目のWe Will Rock Youや3曲目のWe Are The Championといった有名曲ではなく(これらも佳曲だけど)、やはり10曲目のSomebody To Loveや11曲目のKiller Queenではないかと。どちらも違った特徴、魅力を持つ曲だけど、クイーンらしさを非常に端的に表しているという点では一致していると思う。

Somebody To Loveはとにかく過剰。フレディ、ブライアン、ロジャー・テイラーのボーカルを何重にもオーバーダビングして作り上げたゴスペル風の分厚いコーラスを乗っけたロックバラードです。70年代半ばのロックというのは平均して今よりも格段に過剰だったのだけど、オーバーダビングを好んで多用していたクイーンはその中でも特に過剰なバンドだったと思う。ライブも費用を大量にかけて作り上げた絢爛豪華なスーパーエンターテイメントだったし。また一つのバンドの中に3人も歌える(コーラスレベルではなくメインボーカルができる)メンバーがいるというのがすごい。しかも、フレディは力強い唯一無二の声、ブライアンはなめらかな声、ロジャーはハスキーでかなりの高音が出せる、とそれぞれ違った魅力を持っています。さらに歌だけでなく、演奏面でもベースのジョン・ディーコンを含めた4人全員が非常に高いレベルのスキルを有している。しかも嗜好ややりたいことは4人ともバラバラです。つまりクイーンの音楽というのは、このように違った魅力を持つ4人のメンバーがお互いの才能を高次元でぶつけあって作り上げた、何やらよくわからないけれどとてつもなくハイブリッドで高品質なポップ/ロックなんですね。だから過剰になる。

一方でKiller Queenは全く過剰さを感じない曲です。この曲はクイーンの初期のヒット曲で、作曲者のフレディはアイヴァ・ノベロ賞という作曲賞を受賞しています。もちろんソングライティングは絶品。非常に洗練されたメロディです。この曲のモチーフは高級コールガールだそうで、それもあってかアレンジもピアノを基調に非常にエレガントで、(実際のところは知らないけれど)音数も少なくシンプルに聞こえます。そのためフレディの美しい歌唱がより際立っている。ブライアンのギターソロも計算されたなめらかさを感じさせるし、ヘビーなドラムサウンドを好むロジャーもシンプルに且つ丁寧にドラムを叩いている印象。何より、あまり目立たないけれど、ジョンのベースが非常にポップで流麗で素晴らしいです。常々言われていることですが、クイーンはハードロックバンドにしてはかなりポップです。というか、大文字のポップミュージックの中でも特にポップです。これが、彼らが世間で広く受け入れられた大きな要因なのは間違いない。その彼らが持つポップネスを端的に示しているのがKiller Queenだと思う。この曲には過剰さが全くないので、彼らの音楽のポップミュージックとしての骨組みが露になっているからです。この曲は、彼らの高い音楽スキルが行きすぎたところでぶつからずに、非常にちょうどいいレベルで交わった最高級のポップソングだと思う。

と、ここまででけっこう長くなってしまったので、続きはまた明日書きます。中途半端なところで終わってごめんなさい。ではまた明日。