犬の力(下)

今回はちょっとだけネタバレいたします。

『犬の力』下巻、昨日だけで全部読みきりました。いやあ、読みごたえあった…!疲れたけど、一気に読ませるだけの物語の力がありましたねえ。やっぱり下巻のほうが断然おもしろかった。アメリカ大陸の麻薬戦争、反共戦争など政治的な事柄を何重にも絡ませながら、30年近くに渡る「物語」として昇華してるのはすごいと思いました。でもところどころ辛いところもあったね。アダンもアートもどんどん手段を選ばなくなっていくし、血と怒りと悲しみは広がっていくばかり。予想していたとはいえ、パラーダ神父がいなくなってしまうのも悲しかった。しかし一方でノーラの力強さ、凛とした姿が本当にかっこよくて、最後ノーラとカランのラブストーリーが描かれるのは素直に嬉しかった。この作品中、最も甘く美しい。ノーラって最初は、「はあっ?」が口癖のカリフォルニアギャルにすぎなかったんだよ、っていうのを思い出すとまた感動。パラーダって、「犬の力」から魂や愛を救い出す可能性の象徴じゃないかと思う。そしてパラーダの親友だったノーラと、パラーダの赦しの言葉を授かったカラン、この二人がパラーダ亡き後にその可能性(=光と置き換えてみる)を引き継ぎ、最後にその光は交わったんじゃないかな。なーんて考えると素敵ですよね。

ということで、アート、アダン、カラン等たくさんのいい男たちの物語に引き込まれつつ、最終的にはノーラの素敵さに涙する、そんな作品だったと思います。でも言い回しなんかは『覗く銃口』のほうが断然好きなので、やっぱり私は英国的なるものが好きなんだなあと再確認した。