君が音楽に涙した時のことなんて彼にはわかりっこない

昨日買ったガールズのミニアルバム「Broken Dreams Club」がすごくいい。買ったときは、タワレコの洋楽コーナー縮小とRa Ra Riotが置いてなかったショックで心が荒んでて、これでガールズがよくなかったらどうしようと弱気になったもんだけど、全然そんなこと気にする必要なかった。すばらしいよ、これ。

デビュー作「Album」は全て自宅録音だった。一方今回のミニアルバムは設備の整ったスタジオでの録音作品である。そのためサウンドはかなりクリアに、伸びやかになっている。言ってみれば、いい筆といいキャンバスを手に入れ、絵の具の伸びがよくなった感じである。もともと持っている絵の具=メロディが素晴らしいから、いい画材はそれを引き立ててくれる。クリストファー・オウエンスのメロディメイカーとしての才能はやっぱり群を抜いているのだ。今回のミニアルバムを聴いて改めてそれを再確認した。サウンドが変化しても、アレンジが少し洗練されなめらなかになっても、彼の書くメロディは輝きを損なうことなく、それどころかよりいっそう煌めいて、心の深層で響くのである。

私はこの「Broken Dreams Club」を聴いて、ガールズのこの先を聴きたくなった。彼らは「Album」1枚だけで消えていっちゃうんじゃないか、そんな不安もあった。消えていってしまいそうな儚さや脆さが、あのローファイの極みと言っていいようなサウンドから感じられた。その儚さに魅力を感じた人は、このミニアルバムよりも「Album」を好むかもしれない。ある意味「Album」はパンクレコードだった。でも私は、いい画材を手に入れた彼らがこれからどんな絵を描きあげるのか見てみたい。少なくとも、きたるセカンドを手にとることはほぼ確実となった。このミニアルバムは、その先の可能性を十二分に見せてくれた。

やっぱりクリストファーは音楽にこそ、光を見いだしてきたんだと思う。「Broken Dreams Club」を聴いていると、それを強く感じる。


ブロークン・ドリームズ・クラブ

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