【ライブレポ】Foster the People@代官山UNIT

本当はもっと早めにまとめておきたかったのだけど遅くなってしまった……以下、先週行われたFoster the Peopleの初来日公演の雑感をちまちまと。

東京公演は1月17日の恵比寿リキッドルームと、この公演がソールドアウトになったため追加された18日の代官山UNITがありましたが、私は18日のUNITのほうに行きました。代官山UNIT……初めて行ったとき(OK Goのライブ)友人と散々迷ってなんとか見つけたんだけど、今回はその記憶があったから簡単に行けた。代官山って駅出た瞬間に街からいい匂いするよね。

今回も開演前にTシャツを購入。こんなかんじ↓

シンプルだけどかわいい。

開演はほぼ定刻(19時)通りで、まずはサポートメンバー含めたバックの4人がステージに。予想通りというか案の定というか、メンバーはサポートもみんなイケメンで、やっぱりこいつら本物の伊達男集団だわと思ったり。

演奏が始まるとオーディエンスの熱気も一気に高まり、そこに満を持してボーカルのマーク・フォスターが登場。黒のジャケットを颯爽と脱ぐとその下はぴったりした半袖Tシャツで、予想外に二の腕や胸板はがっしりしていたんだけど、体格自体はそれほど大きくない。身長もメンバー内では一番低いよね。よくライブで生のミュージシャンを初めて見ると、写真やPVからは感じなかったオーラ、迫力に圧倒されるということがあるんだが(最近だとYuckのダニエルくんの目力にやられた)、彼の場合あくまで気のいいアメリカ人のニイチャンというかんじで、その距離の近さ、親しみやすさが彼のボーカリスト/フロントマンとしての魅力なんだなあと思った。カリスマ性でステージを支配してしまうようなタイプではないけれど、パフォーマーとしてオーディエンスと一緒に目一杯音楽を楽しんでいる。

このことは他のメンバー(もちろんサポート含む)にも言えて、みんなオーディエンスを楽しませよう、盛り上げようというのも当然考えてやっているのだが(というか盛り上げ上手だと思うし)、それ以上にまず自分の担当する楽器、パートに真っ直ぐ打ち込む姿勢といのを強く感じた。よく野球で使う一球入魂という表現を借りるなら、まさに一音入魂というくらいにそれぞれの演奏、一音一音がパワフルで真摯なのだ。彼らの音楽は「いい意味で軽薄」でそれが彼らの強みだと私もよく言うけれど、一方で彼らの音楽へと向かう姿勢はまったく軽薄ではなく、実際は真面目な職人タイプとも言えるほど。今回のライブでは、その愚直さが更に浮き彫りになって、スタジオ音源にあったインディーポップ好きのするオシャレな意匠が剥がれ彼らの音楽の骨格、肉体の逞しさが明らかになったように感じる。そしてこの剥き出しになったタフなボディと、さっき書いた生マーク・フォスターの第一印象=「この人って案外筋肉質な身体なんだな」がリンクして、自分の中で勝手に納得した。このバンドの強みは絶妙の「軽さ」、と根幹・肉体の強さ——この二つのバランス。そしてライブは彼らの音楽の身体性を露にする。

話がちょっと前後するかんじになるが、一曲目はHoudiniだった。これはオープニングにふさわしい軽快さをもった曲(歌詞もRise above, gonna start the war!と始まる)で、いい具合に体が温まる。以下、セットリストはこんなかんじ(setlist fmより拝借。私の記憶によるものではありません)↓

1Houdini
2Miss You
3Life On The Nickel
4I Would Do Anything For You
5Broken Jaw
6Waste
7Call It What You Want
8Don't Stop(Colors On The Walls)
9Say It Ain't So(Weezer cover)
10Helena Beat
Encore
11Ruby
12Warrant
13Pumped Up Kicks

これで70分弱だったろうか。あっという間だったなあ。こないだのYuckのライブは曲名をちゃんと把握していなかったからセットリストがまったくわからなかったんだけど、今回はアルバムを何遍も聴いて歌詞も熟読した状態=曲名もばっちり記憶していたのにまったく曲順を覚えられなかった。というのは、たぶんあまりにライブが楽しく、早く時間が過ぎてしまって、セットリストがどうこう考える暇がなかったからなんだろう。ライブ当日のずっと前から「彼らのライブは絶対楽しいに決まってる」とかなり期待はしていたのだが、実際は更にその期待のずっと上をいっていて、もうひたすら踊りまくった。何せオープニングからターボ全開の上、最後までその高いテンションを維持し続けるのだから(彼らのアルバムTorchesも最初から最後まで勢いが削がれない、すごい作品)。これには元々の曲の良さというのも大きく影響しているだろうけど、同時に彼らのライブバンドとしての力量が成せるものなのだとも思う。先にも書いたように、彼らの演奏はたいへん力強く真っ直ぐで、その力技でライブ全体の勢いを押し上げている(それだけパワフルにやってもポップさや親しみやすさを失わない曲群もすごい)。

特にそれを強く感じたのが、最終曲のPumped Up Kicks。実は、正直この曲の演奏が始まった瞬間は、ここまで12曲一気に駆け抜けてきた疲れのようなものが見えなくもなかった。それに、この曲は全米で大ヒットし彼らの代表曲とされるナンバーだけど、曲そのものは他と比べるとスカスカで弱い(ある意味一番今のインディーポップっぽいナードさがある曲じゃないだろうか)ように思う。それゆえ演奏開始直後は、「もしかして最終曲(かどうかわからんけどたぶん)にしてグダって終わりなの?」と不安にもなった。しかし、そんな不安を吹き飛ばすように、今回のライブアレンジver.は肉体的なグルーヴが渦巻くダンスナンバーになっており、終盤のサビのリフレインでマーク・フォスターがオーディエンスを煽ってグイグイと会場の熱気を引き上げ、最終的にはバンドの力によってねじ伏せられてしまった。圧巻の出来。最後は放心状態になりつつ、とりあえず踊ったね。

そして今回改めて感じたのは、彼らがいかにリズムを重視しているかということ。こちらから見てステージの右側にパーカッションがどっしりと陣取っていて、そこから生み出される躍動感が凄まじかった。一つ一つのビートが身体の内部に響いて、内側から踊る/ステップを踏む欲求を沸き起こさせるような。本人たちが実に楽しそうにしながら演奏しているのがまたいいよなあ。

ちなみに6曲目のWasteの前にマークさんの長めのMCが入ったのだが、ここで言っていたのは「人生は困難で恐怖に押し潰されそうなときもあるけど、誰に何と言われようと君は君のやりたいことをやっていいんだ、だって君はそうすべきなんだから」みたいなことだったと思うのだけれど、どうかな。Wasteの歌詞の内容からして大きく外れていることはないと思うのだが……。このMCを聞いて、私はここでも度々書いている「いろいろこんがらがっちゃってるティーンの音楽」としてのFoster the Peopleを再認識した。この曲はラブソングとしてとっても自然なのだけれど、ここに出てくるyouは誰かとは特定されていないし、単数か複数かもわからない。不特定多数のyouへ向けた「君が無駄にしたい日は無駄にしたっていいんだ」という言葉。社会での役割や自分への期待を認識し、そのプレッシャーに潰されそうになったティーンたちは、このyouを自分のことだと受け止めるよね。彼らが世界的に成功した要因のまた一つ大きなものを今回のライブで理解したし、このことは彼ら自身も自覚をもってやっているのだろうなと感じた。

と、簡単に書くつもりが長くなってしまったが、シンプルに感想を述べるなら、とにかく楽しかった!踊りまくってシンガロングして笑顔になって。そして終わったあとには、たっぷりの充実感にもっと踊っていたい気分がちょっぴり。何とも理想的なライブな上、彼らの愚直な姿勢を生で感じることができて、ますますFoster the Peopleが大好きになった。サマソニもきっと来るんだろうねえ。