Hello Sadness/Los Campesinos!

カーディフ出身の男女混成バンド、Los Campesinos!の4枚目を聴いた。感想を軽くメモ程度に。

Hello Sadness

Hello Sadness

08年にファーストアルバムをリリースして以降、コンスタントにアルバムを作ってきた一方で、メンバーの脱退加入を繰り返し少しずつバンドの形を変えてきた彼ら。今では女子メンバーのほとんどが入れ替わっているのではないだろうか。正直何度も脱退加入のニュースを目にしているので、今誰がいて誰がいないのかちゃんと把握していないのだけれど……。そんな安定してるのか不安定なのかよくわからない活動ぶりのせいか、彼らにはいつも期待と同時に同じだけの不安を感じていて、それが彼らを好きな理由の一つ(彼らのこととなるとなんだかドキドキしてしまう、こういう感情をもたらすバンドってそういない)にもなっているんだけれど、今回の新譜はそんな彼らにしてはとても出来のいい、最初から最後まで安心して聴けるポップアルバムになったと思う。

作品を重ねるごとにメロディがどんどん磨かれていて、今作収録の曲もどれもがポップで足腰の強いメロディを軸としている。それを歌うギャレスのボーカルも、以前は前のめりで暴発気味だったのだが、今ではエモーショナルな彼の魅力はそのままに、ぐっと腰を落ち着けたものに変わってきた。一方でプロダクションのほうは、その歌(メロディとボーカル)を活かすようシンプルかつオーゾトックスであり、しかしさりげなく前作で身につけた巧みさを聴かせている。彼らにとっておそらく挑戦作だったであろう前作では、音の重なりを厚くし、ずっしりとしたプロダクションを構築していたが、今作ではもっとさらりと効果的なアレンジが加えられていて、音のバランスがとてもいい。USオルタナ影響下のギターは以前ほど前面には出てこないけれども健在で、グロッケンやストリングスも出番は少ないながら、要所でロスキャン印を感じさせる。そして今回は特にエレクトロニックなキーボードの音色が曲に味を出している。

ダークな印象が強かった前作に比べると、いくぶん音が明るくなったとも思う。どこまでも深く潜って内省を突き詰めた、その到達点が前作だったとするなら、今作はそこからいったん地上に出て、また新しいメンバーで一から鳴らしてみようというようなフラットさを感じる。個人的には前作はいいアルバムだけど暗すぎるなと思っていたので、これくらいの明るさがあるほうが安心するし、始め直しの一作としては、バンドの実力を聴き手のみならず自分たちが今一度確認する、いいアルバムになっているのではないだろうか。自分たちは今これだけのことができる、と。

ただ、「安定した音」と引き換えに、これまで私が彼らに感じてきた不安、よろめきとかこじらせのようなものがだいぶ失われてきているのも確かで、それは良くも悪くもあると思うのだが、私は彼らがここからどんな方向に行くか楽しみだし、またこれからも活動を追っていきたいと思うのです。