ボーン・アルティメイタム

結局すべて個別の感想の出来損ないになってしまいました。

監督は引き続きポール・グリーングラス。ついにジェイソン・ボーンが核心に迫ります。


これは素晴らしかった!最後、タイミングを見計らったように動き出すのに笑ったけど楽しかった!

シリーズものの場合、「やっぱり1が一番おもしろかったなー、続編はイマイチだなー」ということが少なくないと思うけど、「ボーン」シリーズはむしろ続編を作るごとにおもしろくなっていく。少なくとも私の中では、迷わず3>2>1の順。なるほど、このシリーズがこれほど多くの人に愛されているのは、3作目のアルティメイタムが素晴らしくよくできていたからというのが大きいのだな。

まあなんといってもグリーングラス演出が冴え渡っている。今回は映画全体としてグリグラ監督の魅力が最大限引き出されるように作ってあって、やはり前作での彼の仕事ぶりは評価が高かったのだなということが窺える。

まず序盤のウォータールー駅の雑踏を抜けていく場面。これはまったく派手な動きがないのに、映画のハイライトとも言えるくらいの気持ちいいシーンになっている。こういう動きそのものは地味なものをエキサイティングなアクションとして見せられる手腕はすごいなーと思う。やっていること自体は前作から大きく変わっておらず、手持ちカメラで臨場感と緊迫感を高めていく。それとこの後のモロッコのシーンでも思ったことなのだが、グリグラ演出+人混みによって画面の緊張感が更に増している。

ロッコのシーンでは、家々を飛びうつっていくところもいい。スピードアップの仕方が絶妙で気持ちよく乗っていける。その後のボーンと敵の一騎討ちも素晴らしかった。このシリーズは一貫して一対一のリアルなアクションにこだわりを見せてきたけど、あのモロッコでの一騎討ちはその集大成と言えるんじゃないだろうか。無駄のない切れ味鋭い動き、お見事でした。

引っかかったところは特にないんだけれど、1から比べるとだいぶスケールアップしているので、あそこまでいくとさすがにいろんなものを巻き込みすぎでは?と思った。全然関係ない国でテロまがいのことしたらダメよね。でも無自覚的にそれをやっているわけではなくて、「事を荒立てずに運ぶことのできない、ボーンに翻弄されるCIA」として描いているから気になるほどではないんだけど。少しだけ、あれはモロッコ側にどう説明するのかしら?とかそもそもアメリカとモロッコの関係ってどうなのかしら?とか考えてしまった。

話の決着のつけ方は「妥当」。特別斬新さがあったりメッセージを投げかけたりするわけではないんだけど、エンターテイメントに徹していてよかったかなと。スプレマシーには宙ぶらりんを感じてしまったので、本作でしっかりケリがついていて安心した。変に風呂敷を広げずに、あくまで「ジェイソン・ボーンの物語」として〆られている。

シリーズ3作どれもおおむね楽しめたけれど、やはりアルティメイタムが一番の傑作だった。現在のアクション映画が「ボーン以降」で語られているのにも大いに納得。シリーズ通してボーンの理解者がずっと女性なのが印象的だったな。しかもマリー以外とは恋愛関係にならず、ボーンは最後まで寂しさを背負った存在。この点に関してはもう少し考えてみたい。

最後に、キリリとしたマット・デイモンよりもシュンとしたマット・デイモンが好きな人間としては、アイデンティティーで銀行のエレベーターに乗っているときにふと「俺、何者なんだろ」という表情になるのがベストモーメントでした。あれはほんと一瞬だけどかあいい!

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