ボーン・スプレマシー

今度こそはまとめて、と思ったのだが、やっぱり力尽きた。

監督はポール・グリーングラスに交代。新たな人生を歩み始めていたジェイソン・ボーンマット・デイモン)だったが、彼を狙う殺し屋の登場をきっかけに、再び過去をめぐる闘いに身を投じる。


これは思いのほか評価がまちまちみたいだけど、私はアイデンティティーよりも断然好き。脚本はやっぱりざっくりしてるし、特にモスクワでのボーンの行動はよくわからないけど、結局はグリーングラス演出が素晴らしかったということに尽きる。「ちょっと画面揺れすぎじゃね?」という難点はあるものの臨場感たっぷりのカメラワーク。カット割りを多くして緊迫感を高めるアクションシーン。そしてなんといっても、全体にもっさりした印象だった前作からキリリと引き締まってシャープに様変わりしたルックが私好み。そうだ、これだ。これくらいのスピード感でガンガン進んでほしいのだ。多少ガタガタしていても構わない。ねじ伏せていく勢いがあれば。

見所はやはりアクションとカーチェイスでしょう。アイデンティティーの感想でも書いたけれど、マット・デイモンは身のこなしがとてもきれいで、タフな体つきとは裏腹にパワー押しになっていないところがスマート。今回はトレッドストーン作戦で育成された殺し屋の生き残りとの闘いがよかった。派手さはないけれども、一つ一つの動きがピシッピシッときまっていくのがたいへん気持ちよく、同時にリアルな生々しさも感じる。そして、モスクワを舞台にしたクライマックスのカーチェイスは圧巻。どうやって撮影してるのかね、あれは。それはメイキングを見ろという話だね。

ジェイソン・ボーンはやはり孤独を抱える匿名の存在であってほしいので、改めて独りぼっちにしたのはよかったかなと。ただ、シリーズの中間点ということで話が宙ぶらりんになってしまった印象はあって、次作にどんなふうにでも繋げていける無難すぎる着地が気になった(ある程度は仕方ないのでしょうけど)。ボーンがモスクワに来た目的もあの時点での彼なりの一つの答えってことなんだろうけど、何かもう少し違った答えの提示の仕方もあったのではないのと思ってしまう。

役者陣は今回もまたいい仕事をしている。今作で新たに加わったジョアン・アレンのキビキビした所作がいい。というか、このシリーズの役者はみんなキリリとしているね。これも前回の感想で書いたけど、各人が自分の持ち場で自分の役割をこなしている。

前作から風呂敷を広げすぎることなく、しかし確実にスケールアップした理想的な続編だと思う。グリーングラス作品は初観賞だったけど、この人の演出は好みだ!アルティメイタムでも監督続投とのことで、期待が高まるぜ!

と、いうことで次はいよいよ「ボーン・アルティメイタム」です。