マルホランド・ドライブ/ロード・トゥ・パーディション

最近、家で映画を観ると、劇場で観るよりも集中できなかったり、観賞後にツイッターで書く感想がおざなりになったりしがちで、よろしくないなあと思います。前に書いたように、テレビとDVDの相性が悪くて映像が乱れるっていうのもあったりして。でも、もうすぐテレビ(AQUOS)にあったBlu-rayプレーヤーが家に届く予定なので、そしたらこの問題は解決するかな。

ということで今日は、家で観賞して、もうちょっとちゃんと観たかったなーと思った映画の感想を二つまとめて。短めです。

マルホランド・ドライブ

ディヴィッド・リンチ作品初観賞。代表作から入ったよ。

リンチ作品といえば、「難解」「わけがわからない」とよく言われるけれど、やっぱり私もこのストーリーよくわからなかった。途中まではミステリアスなサスペンスドラマとして普通に観れるんだけど、あの箱のところから一気に話がわからなくなる……。そして自分なりの解釈を考える前に、あるブログで細部までしっかり分析された非常にロジカルな解釈を読み、私はもうその解釈以外考えられなくなった。だから、「私はこれはこういう話だと思います」ということは今回は一切書かない。まったく自分の考えじゃないし。かわりに印象深かった点を少しだけ記す。

話は理解できなくても、映画自体はすごく楽しめた。なんだかよくわからないけど観る者を惹き付ける力がある、というのは素晴らしい。この独特の雰囲気がリンチ節というやつなのだろうか。死と生、夢と現実などのあらゆる境界が曖昧になったような不思議な世界へ誘われたようで、頭がぼわーっとなった。けれども、そんな不思議な世界にどっぷり浸かってみると、なんだか気持ちいい。そんなかんじ。

それと主演の女優二人が、色気があってたいへんよかった。ローラ・ハリングが演じたリタは、キャラクターがわかりやすいというか、求められてるものがはっきりしている。ミステリアスでセクシーな美女。でも、こういうはっきりしたキャラクターこそ、それをしっかり演じるのって難しいんじゃないかと思うんだけど、ローラ・ハリングはその点すごくよかった。少しぎこちないくらいがナイス。対して、べティを演じたナオミ・ワッツはもろに演技力を問われるかんじなのだが、この人の女優としての気概はすごいね。これまであんまり出演作観たことなかったんだけど、この作品で好きになった。一つの作品の中でこれだけ振れ幅の大きい演技が見せられる人って、きっとなかなかいないでしょう。

一回観ただけではさっぱりわからない話だったけれど、二回目はたぶん思いのほかすんなりと自分の中で物語が構築できる気がする。だから少し年月をおいて、いずれ必ず再見します。そしてそのときにきちんと感想を書きたい。

マルホランド・ドライブ [DVD]

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ロード・トゥ・パーディション

これはですね、友達のオススメでDVD借りたんですが、何度も言ってるテレビとDVDの相性の問題で、字幕の2行目が表示されないという残念すぎる観賞状況で観ました。しかたなく字幕1行目を頼りに残りは聴きとりながら観たけど、カポネがどうこうというくだりがよくわからなかった。これは特段この映画において重要なことではなかったみたいなんだけど、とにかくストレスフルで映画に集中できず。ちゃんと観れなくて作品に申し訳ない気持ちがある。

ただ、話を一部理解できなかった人間が言うのも何だが、この作品はストーリーよりも映像美や俳優の演技、細かな演出を楽しむものだと思った。話自体は「子連れ狼」みたいなかんじで、情感に満ちた復讐劇。特別新しくもなく、非常にわかりやすい内容だと思う。やたらと映像がスローになったりするのはちょっと湿っぽすぎないかいとも感じたのだが、それでもラストシーンはじーんときたのは、上に書いたような映像美、演技、演出による力が大きいのではないだろうか。

撮影は、本作の監督サム・メンデスのデビュー作である「アメリカン・ビューティー」と同じ、コンラッド・L・ホール。これが遺作だそう。「アメリカン・ビューティー」では、この作品において重要な色である「赤」をヴィヴィッドに撮り、色彩のはっきりした映像にしているが、本作では陰影に富んだ撮影で、闇を活かした映像を作り上げている。また、砂浜や室内の白も美しい。

役者陣の充実ぶりは説明するまでもないだろうか。ポール・ニューマンダニエル・クレイグ、そしてジュード・ロウと、新旧の「いい男」達が揃っている。それにしても、ポール・ニューマンダニエル・クレイグが親子ってすごくないですか……。主演のトム・ハンクスはちょっとぽっちゃりしすぎてるんだけど、私はこれくらいのルックスのほうが好きかもなあ。個人的に一番ぐっときたのは、間違いなくジュード・ロウ。この人はものすごいハンサムだけど、目の下にクマだか皺だかがあると、途端に不気味な顔になるのね。すごく端正に整ってるけど、なんだか病的。そして他の話題に目がいきがちだけど、彼はそもそもたいへんに実力がある。殺した人間の写真を撮って売るという気味のわるーいかんじが漂ってきた。

ディテールの演出がしっかりしているのもいい。例えば、手の甲についた血で「ああ、また人を殺したんだな」とわかるところとか、ほんとに小さなことなんだけど。鏡の使い方が特によかったかな。風呂場の鏡に映った……っていう、あの場面はけっこう好き。視覚的な表現が細部まできっちりなされてる映画はよいです。

でもまあ、先にも書いたように、ちょっと湿っぽすぎるかなとは思った。これは好みの問題になってしまうかもしれないけど、もう少しキビキビしてるほうがよかった。今回はちゃんと観賞できなかったから、機会があればもう一度観たい。

ロード・トゥ・パーディション <特別編> [DVD]

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