レポメン(エリック・ガルシア)
昨年の映画ランキングで5位に選んだ「レポゼッション・メン」の原作。作者のエリック・ガルシアは「レポゼッション・メン」の脚本も担当。
アメリカ人作家によるアメリカを舞台にした作品なのだけれど、英国っぽい皮肉めいた言い回しが多くて、英国文化かぶれの人間としてはたいへん嬉しかった。読了までおよそ10日間かかったが、毎日お気に入りのフレーズが必ず一つ以上は見つかった。例えば、
人より頭蓋骨がでかく、脳が小さい。こういう軍事的な緻密さがあってこそ、おれたちはアフリカの戦いに勝利したのだ。
でかい頭蓋骨に小さな脳みそはうちの界隈ではふつうのことで、たぶん水のせいじゃないだろうか。
とか。自虐的で、とにかく何か一言言わないと気がすまないところが、英国的。灰色のユーモアセンス。
非常によく練られたストーリーテリングにも感服した。次々と場面が飛びながらも、最後に物語は一つに収斂されていく。映画版のジュード・ロウによるモノローグ進行もよかったが、こちらのタイプライターで主人公が事の顛末を綴るという形式での進行もおもしろい。映画版よりも主人公の過去エピソードが多く(それを主人公自身が語っているというのが重要)、主人公の孤独や満たされなさが浮き彫りになっている。主人公は何か一つ、自分の心にぴたりとはまるものがほしかったのだと思う。心臓を失い手に入れた心のすきまを埋めてくれるものが。それを踏まえてラストを読むと、なんとも感動的。
- 作者: エリックガルシア,Eric Garcia,土屋晃
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/09/29
- メディア: 文庫
- クリック: 27回
- この商品を含むブログ (17件) を見る