覚書

コーエン兄弟作品におけるリアルとアンリアルのバランスについての覚書。彼らの作品はまだ数作しか観ていない人間の戯れ言。

コーエン兄弟作品におけるリアルとアンリアルのバランスは作品の舞台となる時代に関係している気がする。つまり、今彼らや私達が暮らしている世界(=現代)からどれだけ離れているかが、作品のファンタジー含有量にも影響を与えているというか、自分でも何が言いたいのかよくわからない。

簡単に言ってしまうと

1980年頃:ノーカントリー/現代とはこのような世界だと見せつける内容/ひたすらリアル&シリアス

1930年代:オー・ブラザー!/現代アメリカのルーツを探るような内容(古き良きアメリカと現代アメリカの中間?)/若干ファンタジック、というかすごく寓話的

1870年代:トゥルー・グリット/現代とは異なる倫理観に支えられた世界、己の身一つで人生を切り開かなくてはいけない世界でかく生きるべしを見せた内容/ファンタジーの領域

ということなんだけれど。

トゥルー・グリット」でコーエン兄弟が描いたのは、かつてあった美しかったアメリカというよりは、今ここにはない異世界という印象が強いと私は思う。今ここよりも離れた時代を借りる(西部劇の形をとる)ことで、現代にはないものを描きたかったんだろうなーと。それは、あの頃の世界は美しかったと「過去の風景」に浸るノスタルジーとはまったく違う。「あの頃」があったかどうかは関係ないわけだから。それは「ノーカントリー」でも一緒だったと思う。あの作品は常に「現代」と向き合っていて「過去」がよかったって話は基本しなかったから。ノスタルジーを一番感じるのは、実は「オー・ブラザー!」なんですよね。