3時10分、決断のとき

おととい観た「3時10分、決断のとき」の感想を書きます。これは昨年の映画ランキングで8位に入れた「ナイト&デイ」の監督、ジェームズ・マンゴールドの2007年の作品です。「ナイト&デイ」がたいへんおもしろい作品だったので観てみたのですが、いやあこれ素晴らしいなあ。泣いたよ。二度ほど涙腺決壊した。かっこよかった。切なかった。特にラスト30分の展開が熱すぎる。それぞれに自分の道を貫く男達の思いがぶつかり合って本当に熱いドラマになっているんだ。思い出しただけで胸がいっぱいになる。

とにかくかっこいい作品でありました。画面は序盤から色気を保っているし、役者もいい男揃い(子役までたいへん麗しいものね)。西部劇なのでガンアクションも熱い。ラッセル・クロウが口ずさむ「俺は絞首刑になる、もう太陽は拝めない」という歌もめっちゃくちゃいい歌だし、それをラッセルのあの渋い声で歌うからほんと色っぽいんだ。ラッセルがスケッチをする場面も後半の大事なところで効いてきてたまんなくかっこいい。

中でもかっこいいのは会話ですよ。主演のラッセル・クロウクリスチャン・ベールのやり取りが熱い。特に終盤、ホテルのスイートルームでの会話シーンは、私の中でこの作品が特別になった瞬間でした。ここで一度目の涙腺決壊です。信念のぶつかり合いだよね。なんであんなに熱く会話を撮れるんだろう。特別なことはおそらくしていないと思うし全体的にオーソドックスな印象なのに、このダイアログには他にはない何かがある。カメラが主演二人の表情をしっかりとらえているからだろうか。この作品でマンゴー監督は始めから終わりまでずっと真摯な姿勢で対象にカメラを向けていると思う。だからこんなに熱い会話になるんだうか。西部劇でありながら会話劇としても非常に素晴らしい。

とにかくラッセル・クロウが憎たらしいほど色っぽくてね、熊さんみたいなルックスなのにどんどんいい男に見えてくるんだ。表情の一つ一つが悶絶ものなんだよね。彼が演じたベンという男は殺人も盗みも平気で犯す悪党なんだけれど、むっちゃくちゃかっこよくて抗えない魅力がある。一方ベンを刑務所へ護送する正義の人・ダンを演じたクリスチャン・ベールも流石すぎるラッセルに一人勝ちさせずにしっかり拮抗して、こちらも魅力的に撮られていてまたいいんだ。そしてベンの手下達もベン・フォスターを中心に無慈悲でボスに忠実な強盗団一味をしっかりやっていて、こちらも主演二人に拮抗している。そんな三者が激突し熱い闘いを繰り広げるラスト30分。かっこよくないわけがあろうか!(←すいませんテンション上がってます)そして私の二度目の涙腺決壊が起きたのは最後のシーンです。あれは切ないねえ。どの立場の人間にとっても。ラッセルの渋い魅力でどんどんかっこよく見えていたベンだけど、彼はやっぱり罪深い男なんだよ。彼の業は深いんだよ。それをラストでまざまざと見せつけられる。ああ、涙が。そしてこの切ないラストシーンに、ダンの息子ウィリアムの、少年の視点を加えているところがまたいいんだよなあ。

こんなに胸が熱くなるドラマはなかなかないと思います。荒野映画で父子もので少年が男になる物語でホモソーシャルもので、そしてもちろん西部劇であり会話劇としても熱い。単に西部劇というアクションのジャンルだけでは括れないいろんなドラマが詰まった作品。登場人物みんな自分の道を突き進んでいるからこそこの熱量は生まれるんだよね?すべてに全力を注がなければ、こうはならないと思うんだ。

3時10分、決断のとき [DVD]

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