アンストッパブル

今年初の劇場鑑賞作品は、トニー・スコット監督の「アンストッパブル」にしました。この作品、元々そんなに観たいと思っていなかったんだけど、劇場でもテレビでもよく予告を見るので次第に気になってきて、結局公開初日に観に行っちゃいました。かなり軽い気持ちで観たんだけど、すごく楽しめました。

予告やポスターを見ると、暴走する無人列車を止めるために命をかけた男二人の熱いドラマのように思えるのだけど、実際には、「大量の毒物を乗せた暴走列車が市街地に迫ってくる!」というスリルに溢れた一級品のパニックムービー。男達のドラマは必要最低限で、暴走列車を止めるというストーリーの骨組みに肉付けをする程度。あくまで主人公は暴走列車で、この怪物を止めるために尽くされたあらゆるアイディアを見せていく。非常に迫力のある音と映像で、特にカメラワークが暴走列車を生々しく映し出しており、緊張感を煽る。また作品内で起こる出来事は全て作品をおもしろくするための装置として機能しており、例えばたくさんの小学生を乗せた列車が暴走無人列車と正面衝突しそうになる場面は、実際にこんなことが起きればおもしろいなどとは絶対に言えないけれど、映画のワンシーンとしては非常にエキサイティング。この作品はそうした場面の連続で、一難去ってまた一難、うまくいきそうで失敗する、の繰り返しなので、観ている側も一緒になってドキドキするし、いちいち「おお!」とか「よし!」とか呟きたくなる。この興奮が全てといっていい作品だし、これは劇場で観ないと体感できない(だから私はDVDが出てもレンタルしないつもり)。

とにかく見せたいのは暴走列車を止めるまでのスリリングな過程という究極のエンターテイメント作品で、そのため人物描写やドラマが浅いと言われるかもしれないが、私はむしろエンターテイメントに特化していたぶん重みがなくカラッとしているこの作品の仕上がりに非常に好感をもつ。役者陣も、主人公は暴走列車で自分達はそいつを止めるためにとにかく奮闘する、という役割をしっかり理解していて、どのキャストもしつこさを感じさせない。特に主演のデンゼル・ワシントンの演技が非常にさっぱりしていてよかった。そもそも、迫り来る暴走列車をどう止めるかという目の前の難題に早急に取り組まなければいけないのだから、必要とされるのは男達のドラマよりも決断力と行動力なのは当たり前で、そこで丁寧にドラマを描こうとすれば、むしろだらだらとした印象を生むだけだったように思う。何より、迫力あるスリリングな映像を劇場で楽しむ、という娯楽としての映画の醍醐味をこの2011年に体感させてくれたのが嬉しい。こうしたエンターテイメント作品はある意味前時代的とも言えるが、未だその有効性は衰えていないと証明してくれたから。家族でも友達同士でもカップルでも、もちろん私のようなお一人様でも楽しめる、これぞ映画!な作品。お正月映画として是非早めに。