人生万歳!

今年ラストの劇場鑑賞作品は、ウディ・アレン監督の「人生万歳!」です。一昨日寝坊して行けなかったのでね、今日行ってきましたよ。この作品が映画納めでよかった。そう思えるハッピーな映画でした。ウディ作品でこんなにハッピーな印象が残るものってあんまりないんじゃないかな?(ウディ作品はまだまだ勉強中なのではっきりと言えないけど)

まず冒頭から怒濤のしゃべくり。ウディ映画はこうでなくっちゃ。的を射た鋭い発言なのか、それともただの屁理屈なのか、それは非常に微妙なところだが(笑)、とにかく止まることなく喋る喋る。非常に批判的で皮肉のきいた言葉の数々なんだけど、トゲトゲしたところはなく、お茶目でチャーミングで、足どりはどこまでも軽やかといったかんじ。この気負いのないところがウディ作品の魅力だよね。観客に話しかけちゃう反則技とか細かい笑いもいちいちツボで、さすがウディ・アレンなユーモアセンスが光ってるし、他のウディ作品同様に洒落たジャズの音色が心地いい。「ウディ・アレン健在」をこの目で確認できたのが嬉しかった(ウディの新作を劇場で観るのはこれが初めてなのでね)。

主人公は、気難しいインテリの皮肉屋オヤジ・ボリス(ウディ作品の主人公はこんなんばっかり 笑)。これはウディがやってもおかしくない役なんだけど、さすがにもう演技をするのは体力的にしんどい年齢になってきたんでしょうかね?ウディバージョンも観たいなあ。でもラリー・デヴィッドもよかったよ。終盤、メロディに「実は…」と思いを打ち明けられる場面の表情とか切なかった。このボリスとメロディの関係もまたウディ作品によくあるパターンのもので、最初はボリスのほうが知的に優位な立場にあり、メロディは完全に彼の影響下なんだけど、時が経つにつれて次第に関係は変わり、本当に根っこの部分で相手を必要とし、相手がいないとやっていけないのはボリスのほうだった、という。このことに気づいたときの悲哀、これがウディ作品のベースになっているものだと私は思う。そしてその悲哀をユーモアでくるんで私たちに提供する。だから私はウディ・アレンが好きなんだ。極上のユーモアというのは、最高に笑えると同時に悲しみを秘めていると思うから。

ストーリーは少し安直なんですけど、そこは「Whatever Works(原題)=何でもあり!」。何がどうなるかなんてわからない、でもうまくいくのなら何でもありさ、楽しくいこう、というウディからのメッセージであり、私たちへのプレゼントなんだよね。だからとってもハッピーで楽しい映画なんだ。それなら私も、「何でもあり」の精神で新年を迎えようじゃないか。そう思えた作品でした。