ラブ・アゲイン/フロスト×ニクソン

ラブ・アゲイン

昨年、映画ファンの間で絶賛評が相次いだ、豪華キャスト共演のラブコメディ。なのだが、まあおもしろいけど期待ほどでは、というのが正直なところ。かなりハードルが上がっていたので、普段は気にならない些末な点が目につくのは考慮に入れても、どうにもノりきれないところがあった。どこか「キッズ・オールライト」に覚えたモヤモヤと似たものをこの映画にも感じる。「家族」の関係に閉じていく、そしてそこに弾かれる者が出てくる話は、構成が美しくても演技が素晴らしくても、なかなか好きになれない。やっぱり家族映画は個人的地雷が多い……。「弾かれる者」、とりわけマリサ・トメイの扱いが雑なのが特に残念。途中から単にオカシイ人になってしまっていたよな。

それでも、風呂敷の広げ方と畳み方の鮮やかさ、足下で人物を説明する描写の巧みさ、主人公改造後のモテぶりをバーを一巡りして切れ目なく見せるセンスのよさなどには、アメリカのラブコメの地力の強さを見たし、実力派+旬の俳優女優が揃ったキャスト陣も華やかでよかった。あの全員集合シーンのしっちゃかめっちゃかっぷりはどうしたって楽しい。



フロスト×ニクソン

任期途中で辞職した元大統領から謝罪を引き出したいテレビ司会者(マイケル・シーン)とテレビ出演を機に政界への再進出を目論む元大統領(フランク・ランジェラ)。二人のファイターの静かながら激しい打ち合いをたっぷり堪能した。撮影が始まる前からガンガンパンチをかましてくるニクソンじいさん怖い。

戯曲の映画化作品だそうだけど、単に舞台上を撮影したものになっていないのがいい。印象的なクローズアップだったり、鮮やかな編集だったり、映像的なおもしろさがいろいろあった。あとこれはDVD観賞の場合に限ることだけど、テレビの持つ力とは何たるかを描いた映画をテレビで観るというのはなんだか不思議な体験でおもしろい。