ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜

最近はゆったり考え事する時間がなかなかないので、しばらく雑感書き連ね的な感想文が続きます。あんまり雑には書きたくないけども。忙しいってより要領が悪い。


何はともあれ、「ヘルプ」です。実力ある女優陣のアンサンブルと色とりどりの花柄ワンピースに彩られた60'sファッションを眺めるだけでニコニコしちゃう良作。

http://disney-studio.jp/movies/help/

「フィクションであること」を強く自覚した映画だと思う。印象的だったのは、新聞社の編集長のある一言。社内で煙草をスパスパとすう女性社員(これ何気にがっつり煙草映画なのです!)を見て、「煙を部屋に入れるな!今に煙草の害が証明されるぞ!」と言い放つ。もちろん、この時代に煙草を嫌悪した男性もいたとは思う。けれども、公共の場での喫煙が普通に許されていた60年代が舞台の映画でこうしたことをあえて言わせるのは、喫煙への締め付けが厳しくなり映画からも煙草が消えつつある現在を踏まえた、一種メタ的なネタとして機能しているだろうし、この映画が「今の視点から60年代を描く創作」であることをクリアにしようとしているんじゃないだろうか。まあ、これは半ば妄想だけど、兎にも角にも「ヘルプ」は「フィクションであること」を活かした映画であると思う。もっと詳細に言えば、「これはフィクションなんだから」という潔さと「ではフィクションで描けることは何か」という意識のある映画というか。

だから、60年代アメリカ南部の実態をありのままにスケッチするという点では脇が甘いと思われるかもしれない。それに、あのラストはその後のことを現実的に考えれば、かなり微妙な終わり方ではあると思う。でも、そうした「現実」を追うよりも「厳しい状況下で女性が自分の言葉を見つけること」を描くのを優先するような心意気が私は好きだし、重たい空気が立ち込めてしまいそうなラストシーンに一筋の希望の芽生えを示して、状況を反転してみせるポジティヴィティがこの映画の美しいところじゃなかろうか。これは、当時の黒人メイドに対する差別を告発するというより、女性が言葉を通して自分を見出だしていくフェミの物語。そしてそれは、フィクションだからこそ描けることだと思う。フィクションの力、物語る力をこの映画は最大限に活かしている。

そして、ちょっと想像以上のことで嬉しかったのは、黒人女性がその思いを白人女性に代弁してもらうのみに留まらず、自らの言葉を持っていることだった。予告を観る限りでは、進歩的な考えを持った白人女性スキーターを書き手/語り手として彼女を中心に展開するように思えるのだけど、実はもう一人、書き手/語り手となる女性がいる。そのことによって、白人の言葉と黒人の言葉、記文と口承が交差した、一方通行でない女性の連帯/共闘が描かれるようになっている。ただ、これに関しては、字幕では拾いきれていないところもあったと思うし、英語をきちんと理解していない私には実際のところはよくわからない。

それぞれに素晴らしい演技を見せた女優たちから一人を選ぶのはかなり難しい。というか無理だ。エマ・ストーンはやっぱりあのカラッとした話し方や振るまいがかっこいいし、怒りや不安を押し殺すヴィオラ・デイヴィスの表情も心に残る。嬉々としてヒールをかってでるブライス・ダラス・ハワードから実は彼女よりもタチの悪いエリザベスを演じたアナ・オライリーに至るまで、かの国の女優の層の厚さを実感させる充実ぶり。そしてもちろんブロンドのジェシカ・チャステインは最高にキュートだった。