わたしを離さないで
昨年のDVD観賞分まとめ第1弾として。今年は、まず書いてみる→書けたらアップをなるべくスムーズにやりたい。
原作未読。
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2011/09/28
- メディア: DVD
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おそらく映画は、彼らが成長して学校を出てからの大人パートを中心にしたかったのだろうし、そのために原作にある学校での教育が描かれた子どもパートをだいぶ削ったのではないかと想像するけれど、それはある程度必要な、仕方のない省略であるとはいえ、さすがに彼らが「自分たちは特別だ」と理解する瞬間すら描かないのは描写不足なんじゃないだろうか。その点が不明瞭だと、そもそもの主人公たちの考え方や価値観がわからなくなってしまうから。逆に言えば、原作では「寄宿学校で何が行われていたか?」は映画より細かく描かれていると思うので、いずれ読んで確認したい。
と、主人公たちの自己や世界の捉え方がさっぱりわからないため前半はノレずにいたのだけれど、途中で「これはディストピアSFじゃなく青春映画なんだ」と見方を変えてからはだいぶ飲み込みやすくなった。そうこれって、過酷な状況の中でも友をつくり恋に落ち、時には傷つけあったりしながら生をまっとうする若者たちを描く、いわば「ベンジャミン・バトン」にも通じるような「特殊な人生から普遍的な生の物語を描き出す」映画なのだ。私が想像したようなディストピアSF的な抵抗の物語からは生み出せない、「普通の人間」と同じように、ごく普通に一生懸命に人生を生き抜くことの力強さや美しさ。この映画が描いているのはそれなのだと思う。そしてそれによって映画は、より普遍的で、悲痛さの中にも生きる輝きが満ちた物語を獲得している。
まあでもやはり、「ベンジャミン・バトン」の場合は理不尽を訴えてもどうしようもないけれど、この映画の場合は声を挙げてみれば状況は変わるかもしれないわけで、その点について何も触れないのは不自然すぎるとは思うのだが。ただ、主人公たちが恋や友情に生きる姿を見ていると、あのように普通に生きようとすること自体が彼らを物のように扱う人間たちへのプロテストのようにも見えるし、彼らほどひどい扱いは受けていなくとも日々の生活で消耗している現実の世界の私たちにも「それぞれに生きている一人の人間」を改めて感じさせるんじゃないかと、最近思ったりする。
最後に役者に関してだけれども、キーラ・ナイトレイがちょっと損な役回りかなと思いつつも、それでもしっかり存在感を残しているなと感じたし、何よりキャリー・マリガンとアンドリュー・ガーフィールドが素晴らしい。そもそもこの二人が出ていながら何故劇場に観に行かなかったのだ、という。キャリーは苛立ちを噛み殺す唇に彼女の脆さと強さが両方滲んでいて胸が苦しくなる。アンドリューは「BOY A」のときのような、ぎゅっと握ったら粉々にくだけちゃいそうな繊細さを湛えつつ、相変わらずぼんやりした表情でキャリー演じるキャシーを傷つけまくるのが実に彼らしくて好き。