メカニック

ジェイソン・ステイサムベン・フォスターの共演ってだけで観る前からかなり点数甘めではあったけど、それにしたってこの楽しさは予想を遥かに上回ってたし、それはこの映画に「好きな俳優をいっぱい見れて嬉しい!」以上の何かがちゃんとあった証拠だと思う。少なくとも今年のベスト5に入るくらい好きだし、近所に上映館があればもう一回観たいし、DVDは出たら絶対買う。廉価版待つかもしれないけど。

(イサムの二の腕ぱねえ!!)
お話のほうは、まあかなり粗さが目立つ。そもそも、なんでハリー(ドナルド・サザーランド、贅沢な使い方!)はあの場面でちゃんとアーサー(ステイサム)に説明しないの?とか、ツッコミを入れたくなるところはいろいろ。しかも、ほとんどのツッコミを「周到な準備をしたからです(キリッ」の一言でどうにかできちゃうからすごい。でも、それは作り手のほうもわかってやっているのだろうし、ストーリー上の欠陥は見受けられても、話運びはスムーズで会話も軽妙、キビキビと無駄のないつくりからは、バカなことをやっててもセンスのない映画ではないとわかる。あのグルーヴィで足どりの軽いかんじは、ドン・ウィンズロウの『フランキー・マシーンの冬』を思い出したりもした。さすがにあんなにかっこよくはないけど、何か近いものを感じる。

アクションは流れを重視しているようで、「動きの派手さ」はそれほどないけれど、スーッと画面を舐めていくような「動きのなめらかさ」がとても気持ちいい。ぎこちなく流れが止まる瞬間がなく、気分よく波に乗っていける。最初のアーサーの仕事、ビル降下の一連の流れ、スティーヴ(ベン)のガンアクションなど、どれもちょっと冷めたかんじにサクサクと進んでいくのがよい。一方で、殺しの痕跡を絶対に残さない殺し屋=メカニックでありながら、スティーヴが登場してから、痕跡残しまくり、めんどうなこと起こりまくり、最後はもはや痕跡どころの問題じゃねーという大規模な騒ぎに発展するのも最高。尻すぼみになることなく、どんどん加速していく。

まあでも、何だかんだいって、イサムとベン・フォスターの師弟ものにできた時点でこの映画勝ちですよね、っていうところに最後は行き着いてしまう。強面だけど目がセクシーで包容力のあるイサムと、凶暴性の裏に一途さとかわいらしさを隠したような顔をしているベンをうまく対比させてるし、それを女の子(まったくかわいく撮る気がないらしい、この潔さもむしろ好感)との絡みで示すあたりがまたよいじゃないか。イサムは相変わらずぴんと伸びた背筋が美しく、開始早々しっかり脱ぐわかりっぷり。こういう役ばっかりやりすぎじゃないとも思うが、こういう映画にはやっぱりイサムが必要でしょう。ベンは犬を使ってターゲットにハニートラップを仕掛ける場面がたまらなかった。「その抱っこしてるチワワよりも、あんたのほうが犬っぽくてかわいいよ!」とか、わけのわからないことを思いながら観てた。乱暴な振る舞いをするところも不器用な不良少年っぽくてキュンキュンくるし、目に涙を溜めるところもズッキューンくる(バカっぽい表現……)。「女の子はちょっと悪そうな男の子が好き」とはまさにこのことか。イサムも安定のセクシーハゲぶりだったけど、今回はベンに軍配を上げたい。

最後にこの映画のことではないんだけど、観てて思ったこと。アクションスターといえば、スタローンとかシュワちゃんとか、男の子の憧れ的存在というイメージが強い。アクション映画自体、男の子のものという感覚がある(そんなことないよという人も多いでしょうし、スタローン好きの女子もいるでしょうけれど)。しかしイサムは、そんな古風なアクションスターの雰囲気を残しながらも、男子人気とともに女子人気が非常に高い。これはすごいことだと思う。禿げてて青剃りがすごくて強面なのに、不思議と男臭さは感じないし、この人が出演する映画はどれもフェミニンな感触がある。イサムは一見汗臭そうなアクション映画に女性客を呼び込めるスターで、事実「メカニック」を女の子二人組が観にきてた。彼が今のアクション界で引っ張りだこなのはそのためではないかな。男女問わず夢中になれるアクションスター。それをわかって「エクスペンダブルズ」でイサム推ししたスタローンは、やはり偉大だなと思う。