独裁者

一昨日ばあちゃんちに行きましたら映画の話になりまして、何故かチャップリンの「独裁者」を観る流れになったので、せっかくだし観てみました。いやー、観てよかったです。おもしろかった。ちょっと時間経っちゃったけど、軽く感想を書きます。

これはチャップリンが架空の国トメニアの独裁者ヒンケルに扮して、当時(1940年)のナチス独裁を皮肉った、非常に大胆なコメディ作品。私はこの作品を観て、ユーモアってすげえなあ、「闘う力」を持ってるんだなあというのを改めて感じました。チャップリンはこの作品でヒンケルだけでなく、迫害されるユダヤ人の床屋チャーリーも演じているのだけど、コメディアンとしてのチャップリンの本領(チャップリン全然詳しくないですけど)はむしろヒンケルを演じているときにこそ表れていると思う。何というか、鋭さがチャーリーを演じてるときとは違う。皮肉と抗議の意味を込めて茶化し、それでいて純然たる笑い・くだらなさとして表現している。だからチャーリーよりもヒンケルの笑いのほうが鋭いし力強い、と私は思ったんですがどうでしょうかね。

ヒトラーをモデルにしたヒンケルのほかに、ムッソリーニをモデルにしたナポロニというのも出てくるんだけど、この男がまあ陽気なラテンおやじだこと。独裁者を皮肉りつつも、一面的な描き方はしてない。そこがとてもフェアで、かつおもしろいと思った。「独裁者悪いヤツ」ってだけの描き方じゃ退屈だし、人間的なマヌケさというか、ほっこりした部分に独裁者の非情さみたいなものを盛り込んでることで笑いが生まれるんだろうなあと思いました。いやはや。

この作品はラストの演説の部分が非常に有名ですが、私はこの演説が一人の女性に向けられた言葉で締め括られているというのがすごく好きです。愛と平和を説く力強い言葉の最後に、愛する者への語りかけを添える。これとてもロマンチック。そして希望の光が射し込んでこの作品は終わる。

たまたま観た作品だったけど、やはりいい作品でした。チャップリンのような古典もたくさん観ていきたいね。

独裁者 (2枚組) [DVD]

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