ドライヴ
「旬の男優+キャリー・マリガン」くくりの2作のうちの一つ。もう一つは、もちろん「SHAME-シェイム-」です。この2作はどちらも余白が多くて掴み所のない作品で、なかなか感想を書くのが難しい。ので、ツイッターでの感想を少し膨らませて貼ります。明日書く予定の「SHAME」の感想もたぶんそうなる。
http://drive-movie.jp/
名前や経歴のわからない、ある「ドライバー」を主人公に描く、おかしな方向に捻れた、しかしとてもロマンチックなバイオレンスアクションメロドラマ。ドライバーの内面や背景がほぼ説明されないためか、現実離れした不思議な浮遊感があって、それがこの作品独特の魅力になっている。詳細の描写を大きくカットしたことによって、不安になるほどたっぷりの間ができているのに、一時たりとも画面の緊張感が切れることがないのがすごい。これにはやはりドライバーを演じるライアン・ゴズリングの力が大きいと思うのだけど、この人喋るときにまったく瞬きしてなかったのだね(ツイッター等でお世話になっているお姉さんのツイートで気づいた)。だからこっちも画面から目が離せなくなるのだな。
まるで一本のPVのように、独立した作品として見られるアヴァン・タイトルがとてもいい。ハリウッド大作でいうところのカーチェイスとは違う、まるでチェスをプレイするような、静かな中にも緊迫感のある一瞬一瞬が詰まった逃走の描写には、体温が上がった。ここでの音楽や野球中継の音声(というか、この映画で使われるすべての音楽)は映画の内容とリンクしているんだと思うので、ぜひ字幕をつけてほしかったなあ。
観賞からしばらく経ってからは、アヴァン・タイトルだけでなく、映画全体として「なんだかPV(not MV)みたいな映画だなー」という感想を持つようになった。それは既成曲がすごく印象的に使われているからというのもあるんだけど、それ以上に作り手の「こういうのやりたかったんだ、いいでしょ?こういうの」を詰め込んだ「これやりたい」のプレゼン映画のように思えたから、というのが大きい。PV(プロモーション・ビデオ)って、単に音楽につけられた映像という意味のMV(ミュージック・ビデオ)と違って、そのミュージシャンや音楽の魅力を「プレゼンする」販売促進用の映像といったニュアンスがあると思うので、作り手のやりたいことが明確に、かつ様々に提示されたこの映画はまるでPVみたいだなーなんて考えたわけです。ちょっと何言ってるか自分でもわからないけど。ただまあ何度も言っているように、やりたいことが明確な映画が私は好きなので、この映画もけっこう好き。わざわざピンクの文字を画面に踊らせる美意識とか、どうにも惹かれてしまうところがある。
明日、続きで「SHAME」の感想を書く予定。締め方がよろしくないけど、今日はここでおしまい。