恋人はゴースト

昨年観賞ぶんのまとめがまだ終わってませんが、とりあえず今年のぶんを溜めないことを優先します。てことで今日はこちら。

恋人はゴースト スペシャル・エディション [DVD]

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この邦題からもなんとなくわかるようにソフトスルー作品なんだけど、ほんとに日本でラブコメは厳しいんだねえ……キュートで楽しい良作なのになあ。


主演はリース・ウィザースプーンマーク・ラファロ。妻を亡くし心を閉ざしてしまった男の借りたアパートに交通事故で亡くなった前の持ち主の霊が現れる!って設定がもう楽しい。

冒頭のリース・ウィザースプーンがテキパキと仕事(お医者さん役です)をこなしていくシーンからたいへんテンポがよく、グイグイ引き込まれました。このへんのつかみの巧さは流石アメリカのラブコメというかんじで、軽快なリズムが心地いい。この映画、プロットを簡単に説明するだけだとハチャメチャでなんだそれー?となってしまいそうなんだけど、こういうリズムとか見せ方が巧みなので最後まで勢いよく観られる。

という意味で、やはり主演二人のコメディアン/コメディエンヌとしての力量が非常に大きい作品だよなあと思う。リース演じるエリザベスが亡霊なので電話などの物体に触れない場面、マーク演じるデヴィッドに乗り移って勝手に動き回る場面、あるいはデヴィッドが他の人からは見えないエリザベスの指示を受け人命救助する場面。どれも下手にやってしまうとなんだか寒かったりテンポが悪くなったりしてしまうのだが、この二人は絶妙に巧かった。二人ともコメディの呼吸がしっかり身についているのだろうな。大げさに、でもしつこくウザったくはなく、爽やかに。リースのちょこまか、ハキハキと動き回る姿もとってもかわいいし、マークのセクシーな包容力の前には相変わらずひれ伏すしかなく、二人の相性もばっちり。マークはこの映画のときくらい短髪のほうがさっぱりしていて良いよ(単に自分が短いの好きだけ)。

また役者のみならず脚本も細部がきっちりしていてよかった。お話自体は突拍子のないものだけれど、「なぜデヴィッドにはエリザベスが見えるか?」「なぜ二人の間には絆があるのか?」などの設定は疎かになっていない。鍵や庭園などのアイテムの使い方も気が利いているし、ある人の伏線回収なんかは特に見事だった。

主人公二人のうちどちらかだけが相手の力によって救われるのではなく、二人共がお互いの力によって何かに囚われた状態から解放され再び立ち上がる、「支えあいの再生物語」であるのも素敵。話の重心を片方に置かず、互いの視点を行き来しながら、二人が結ばれ再生するまでへと収斂していく構成によって、物語が固定的でなく流動的になっている。このへんも脚本の細やかさや編集のリズムのよさが出ていると思う。ラブコメというと「女性向け」のものというイメージを抱かれがち(もちろん実際はそんなことないんだけども)だけれど、この映画では男性側の視点も女性と同じように描かれていて、そのへんはしっかり「現代」のラブコメ

あ!ちょっと肝心な人を忘れていることに気づいた。オカルト書店員役のジョン・ヘダー!登場シーンすべておいしくてニヤニヤしてしまうのだが、それにしてもいいとこもっていきすぎ!ってことで、ジョン・ヘダー好きは必見ですよ、これ。(なんという〆だ)