ランナウェイズ

劇場公開時から気になってはいたのだが見逃してしまったので、DVDで後追い観賞。しかしこれは劇場で観なかったことを激しく後悔した!なんだこの胸に突き刺さるかんじは!クリステン・スチュワートが男物の革ジャン着て駆け出す冒頭から涙ぐむなんて思ってなかったぞ!

1970年代半ばに平均年齢16才の女の子たちによって結成されたアメリカのバンド、The Runaways。その短いながらも濃厚なバンドヒストリーを、ボーカルのシェリー・カーリーの自伝を基に描く作品。シェリー・カーリーをダコタ・ファニングが、ギター&ボーカルで後にI Love Rock'n'Rollというヒット曲を生み出すジョーン・ジェットをクリステン・スチュワートが演じる。


いや、これは何といったらいいんだろう。例えば「ソーシャル・ネットワーク」のような、ものすごい映画ってわけじゃない。ストーリーはバンドの伝記ものとしてはよくあるものだし、語り口はシンプルでそっけないくらい。「まあ特別すごいとこはないけど、よくできたバンドの伝記映画だね」と言われたら、確かにその通りだ。でもね、私はこれ青春映画として観た。10代半ばで「セックス、ドラッグ、ロックンロール」に身を投じた女の子が目にした世界を、ありのままに、ヴィヴィッドに映像化した青春映画として。そこには「ローラーガールズ・ダイアリー」のようなカタルシスはないけれど、普通の女の子が世界とぶつかったときの混乱がリアルに捉えられているし、何より「あの時、あの場所にしかない特別な瞬間」が高純度で結晶化されていて素晴らしい。

脚本の基になっているのがシェリー・カーリーの自伝ということで、映画のほうもシェリー目線で進行するのだが、これがこの映画でとても重要なポイントだと思う。バンド加入前のシェリーは、ロック好きではあるもののそれを自分の表現手段としては考えておらず、「ウェイトレスで終わりたくない」と思ってはいるがそのために何をするかは定まっていない。彼女は、言ってみれば、普通の女の子として描かれている。一方でもう一人の中心メンバー、ジョーン・ジェットは、「女の子だけのロックンロールバンドを組む」という意志が明確にあり、彼女にとってバンドは命に等しい。ジョーンのように、強い芯を持ち、自分のすべてを何かに賭けることができる人は稀だ。自分のやりたいことがはっきりと定まっており、ロックンロール命だったジョーンではなく、平凡なまま終わりたくないと思いながらも、そのために何をするかが定まっていなかったシェリーの視点を中心にしたことで、本作は「普通の女の子の青春映画」になったと思うし、だからこそ私にはぐっときた。


ほんとはもっといろいろ書きたかったんだけど、書き出してみたら自分の中で全然整理がついてなかったんで、とりあえずここまででドロップする。続きを書く機会はたぶんないだろうけども。