青い春


よくも悪くも「2002年の作品」であり、思っていた以上に「時代」を感じてしまった。これくらいの「ちょっと昔のもの」こそ今見ると最も古く感じるものなわけで、正直この作品も、古いとは言わないまでも、こっぱずかしくて笑ってしまう場面がいくつかあった。そのため、映画の世界に完全に没入することができず、作品の本質を掴めぬまま終わってしまったように思う。また10年もすれば、この古さは漂白されて、フラットに作品を観ることができるんだろうけど、テン年代に入ったばかりのこのタイミングで観るべき映画ではなかったかもしれないね。あるいは、解散直前のミッシェル・ガン・エレファントを知らないというのも大きい。TMGEにはまったく思い入れがないので、(もちろんかっこいい音楽だとは思うけれど)特別胸に突き刺さるようなことはなかった。

ただ、断片的にではあるけれど、響くものは確かにあって、ハッとさせられる場面には何度も出くわした。野球部を引退した木村の行動とホームランバーに書かれた言葉がバシッとハマる瞬間の気もちよさは格別だし、ドリブルする九條を地面から撮るカメラワークもおもしろい。しかし何といっても、一番グッときてしまうのは、九條と青木がタバコをあわせるところだろう。タバコとタバコで繋がっているということが、二人の絆のか細さ(というか、誰と誰の間にできようと、絆というのはか細いものなのだ)を表していて、なぜかこのシーンでは泣きそうになった。本作は数ある青春映画の中でも、とりわけ「若さがもたらす痛々しさ」に焦点をあてた作品だと思うのだが、このシーンでその「痛々しさ」は「美しい画」へと昇華されている。

また役者陣がみな魅力的に撮られているのがいい。主演の松田龍平の美しさには驚いた(もちろん今がきれいじゃないって言いたいわけじゃないよ)。あの美しさは、あの一瞬にしか存在しえない美しさだと思う。松田龍平だけでなく、他の俳優に関しても同じである。いや、俳優だけでなくすべてにおいて、この映画はその瞬間にしかないものを切り取っている。それもきれいに研いだメスじゃなくて、歯こぼれしたカッターで強引に切り出したようなささくれだったところがいい。

青い春 [DVD]

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最後に、どうでもいい話だけど、青木役の新井浩文が高校の同級生に似てて冷静に見れなかったよ。学ラン姿毎日見てたし。この作品の新井浩文はすごく輝いてたね。面構えがいい。「昨日はごめん」とメモ書きを残す青木くんがかわいくてたまりませんでした。