マルコヴィッチの穴

今日は「マルコヴィッチの穴」を観ました。先日発売された『ゼロ年代アメリカ映画100』という本でも2000年代を代表する一作として紹介されていたし、ゲオで見かけるたびにあのジョン・マルコヴィッチだらけのジャケットが気になってしかたがないので借りてみました。が、うーむよくわからない。いや全然わからない。私の頭が足りてないのか何なのか。とりあえずあの終盤の展開はまったく好きになれない。

あっさりネタバレするかもしれないのでご注意。

「15分間だけジョン・マルコヴィッチの脳内に入り込める穴を見つける」というアイディアはとてもおもしろいのだけど、かといってアイディアだけで勝てるほどのもんでもないだろうと思う。このアイディアを膨らませていって物語にするのが脚本というものだよね。ほとんど膨らんでなくないですか……。穴を通して主人公達は何を見て何を感じ何を知ったのか、それが結局よくわからないままだし。別に主人公が最後まで欲望に走るのが嫌というわけじゃないです。そういう皮肉で終わるのも悪くない。でも、この人達何かを真剣に考えたことあるの?って思っちゃいました。結局最後まで観て、「だから何?」としか思えなかったし、ラスト10分くらいはちょっとどうでもよかった……。7と1/2階の天井が低いのも「なんとなく不思議なかんじ」という雰囲気を創出しているくらいの機能しか果たしていないような。チンパンジーがトラウマを克服するシーンが何故挿入されるかもわからない。このへんにはちゃんと哲学的な意味かなんかが付与されているのでしょうかね?あとやっぱりみんなものごとを考えてなさすぎだと思った。特にレスター(というか中の人、マーティンだっけ?)と仲間の年寄り達の無邪気さには嫌悪感すら覚えた。みんな他人を乗っ取ってしまうことに対して無頓着すぎる。そういう無邪気さというか、人間の愚かさ、滑稽さを笑うブラックコメディだったのかなあ。そうだとしても私は好きにはなれない。何故ジョン・キューザック演じる主人公だけが仕打ちを受けるんだろうね。

かなり難解な話かと思ってたのだけど、意外にシンプルな構成でキャサリン・キーナー演じるマキシンをめぐる異形のラブストーリーを軸にしっかりしたドラマになっていて、その点はわかりやすく楽しめました。あと意識を乗っ取られて振り回されるジョン・マルコヴィッチの演技は最高でした。ダンスのシーンなんかはハイライトと言えるんじゃないでしょうか。終盤はよくわかんなくなってしまいましたが、前半の謎めいたシュールな雰囲気はよかったかなあ。

いやしかし同年代の作品なら「ファイト・クラブ」のほうがより時代の空気を一つの物語として体現していたと思うし、「メメント」のほうが脳ミソ系映画として断然好きだ。これを不条理コメディというなら私はこういうの好きじゃないっす……。むーんそれにしても、『ゼロ年代アメリカ映画100』読むべきかなあ。

ゼロ年代アメリカ映画100 (アメリカ映画100シリーズ)

ゼロ年代アメリカ映画100 (アメリカ映画100シリーズ)